タグの付いたニット

織りネームタグ・製品に寿命が尽きるまで寄り添うメディア

「「織りネームタグ」とは、衣料品やバッグなどのメーカー名、会社名、服のサイズなどをデザイン化し、タグ状にしたものです。織りネームタグの役割は、いわゆる「下げ札」=「ペーパータグ」と重なるところがあります。すなわち、「品質表示、洗濯等取扱方法など、消費者が必要とする情報を伝える」「ブランドイメージ、商品イメージを消費者にアピールする」といった役割です。

その一方で、織りネームタグの形態は下げ札・ペーパータグとは大きく異なっています。下げ札が一般に「紙」と「吊り紐」から成っているのに対し、織りネームタグは布製であり、かつ衣服やバッグに、容易には取れないようにしっかり縫い込まれています。購入後、ふつうは外してしまう下げ札とは異なり、製品が使われ続ける寿命と同じだけの期間、製品に寄り添いながらユーザーに必要な情報を伝え続ける「持続的な情報メディア」なのです。

では、織りネームタグがユーザーに伝える情報について整理しましょう。

法定製品品質表示のためのラベルとして

様々ジーンズのタグ

消費者が価格に見合った品質の製品を安心して買えるようにすることは大切です。特許庁が「商標」を知的財産権として保護する制度をおこなっていること、経済産業省がJIS規格などにより安全・安心な製品の流通を守ろうとしていること、消費者庁のさまざまな取り組み、これらはすべて消費者の安全でゆたかな消費生活を守る目的に向かっています。

この目的のため、国内に流通するすべての製品・商品には、メーカーと販売元による品質表示が義務づけられています。

表示は下げ札でも貼り札でもよいとされますが、「わかりやすい位置に」掲げることが求められます。「織りネームタグ」は「貼り札」の1種であり、その重要な任務のひとつは法定事項の表示にあります。

品質表示・混用率

オリジナルブランドショップ

繊維・皮革製品の場合、使用している素材について種類ごとの比率(混用率)を百分率(%)で明示するよう定められています。「綿100%」、「羊毛50% カシミア50%」などといった形です。皮革素材も使っている場合、「牛革」、「ワニ革」など、由来動物の種類を明記します。このように、製品全体の中での素材使用比率を示す方式を「全体表示」と言います。

これに対し、「分離表示」という形式がとられることがあります。製品の部位ごとに分けて組成繊維を表示する方式です。表示形式についてあまり厳密な規定はありませんが、わかりやすく表示することが求められています。たとえば、「たて糸 綿100% よこ糸 レーヨン100%」、「地糸 ポリエステル100%、柄糸 レーヨン100%」などといった形です。

品質表示・はっ水性

レインコートを着る女性

布地や皮革の水をはじきやすい性質を「はっ水性(撥水性)」と言います。レインコートなど製品によっては重要な性質ですので、表示することができます。

JIS規格で定められた「繊維製品の防水性試験方法」にもとづく試験をおこない、規定された水準以上のはっ水性が認められたときに「はっ水(水をはじきやすい)」などといった表示が可能になります。洗濯などによりはっ水性が失われる製品の場合は、「水洗い後は撥水効果がなくなります」などその旨を付記する必要があります。

家庭洗濯等取扱方法

様々なセーター

家庭で洗濯や漂白、乾燥、アイロンがけをおこなうにあたっての注意事項を、JIS規格で決まった記号をつかって表示します。現行の最新版は2012年に改訂されたものです。

これは身ごろの内側に縫いつけられた布製の「縫い付けラベル」、すなわち、ここで注目している「織りネームタグ」に表示されることがほとんどです。「容易に取れない方法で繊維製品に取り付けなければならない」と定められているからです。「消費者が簡単にわかる箇所に見やすく、縫い目などに隠れず」取り付けるように、とも定められています。まさしくこれは、織りネームタグに向いた用途です。

取り扱い方法をあらわす記号は、洗濯、漂白、タンブル乾燥、自然乾燥、アイロン仕上げ、ドライクリーニング、ウエットクリーニングの順番でならべます。いずれかの取り扱いができないケースでは、その扱いをあらわす記号に「×」を付けて載せます。

法定表示事項・表示者名・連絡先

大きなタグの付いたTシャツ

当然のことながら、以上のような情報を表示するメーカー名、ブランド名とその連絡先は表示するよう義務づけられています。会社名、住所、電話番号は最低でも記載します。混用率と洗濯等取扱方法が下げ札と縫い付けラベルに分けて表示されている場合は、その両方に記載します。

このように、織りネームタグは法律の定めにしたがって消費者に必要な情報をわかりやすくコンパクトに伝える役割をになっています。

ブランドイメージ・商品イメージを消費者にアピールする

シンプルなデザインのタグ

法定表示事項と同じか、あるいはそれ以上に重要なはたらきがこれです。ブランドイメージ、商品イメージを消費者に伝え、アピールする仕事です。

前述のように、織りネームタグの役割は下げ札・ペーパータグと重なるところが大きく、下げ札・ペーパータグも同じく「ブランドイメージ・商品イメージを高め、アピールする」はたらきをします。

ただし、下げ札は商品の購入後、ふつうは外してしまうものです。これに対し、織りネームタグはしっかりと縫い付けられています。ですから、「商品の寿命と同じ期間だけ持続する情報メディア」といった書き方もしました。

下げ札については「物言わぬセールスマン」という言い方もしましたが、商品そのものと不可分であり、持続的にブランドイメージと商品イメージを発信する織りネームタグは、「メーカーがブランドのプライドを賭けて付けた品質保証書」と言えます。ちょうど私たちが運転免許証やパスポートをふだん持って歩くように、織りネームタグは商品と不可分の「身分証明書」であり「パスポート」のようなものです。販売が完了すれば用済みとなる「物言わぬセールスマン」=下げ札よりも、長く発信を続ける「ID(身元証明)」なのです。

織りネームタグはブランドの保証・商品の身元証明

タグを撮る

ブランドイメージ・商品イメージをアピールし保証することは、織りネームタグの大きな役割です。オシャレであったり、かわいかったり、高級感のあるものだったり、それぞれの商品にふさわしいイメージでデザインされた織りネームタグは、アピールするブランドイメージの力で消費者を強く引きつけ、商品の価値を高めます。織りネームタグは商品の付加価値の一つと言っても過言ではありません。オシャレ系、カワイイ系、ゴージャス系、フォーマル系、さまざまなステージを持つ商品がありますが、それぞれにふさわしい風合いを持った織りネームタグを商品に付ければ、その商品の価値はより一層引き立つことでしょう。

ブランドイメージ・商品イメージにふさわしい織りネームタグを

大きなタグ

織りネームタグには、織り上げる糸の素材、太さに加え、「織り方のパターン」や「折り曲げ加工の手法」などにより、多彩な雰囲気・風合いを持たせることができます。「ブランドイメージ・商品イメージを高め、保証する」という織りネームタグの役割から考えると、持たせる雰囲気、風合いはやはり「ブランド・商品にふさわしく、似つかわしく」あるべきでしょう。

上記のように、素材、織り方、折り曲げ方を組み合わせて、多彩なステージに合わせた織りネームタグを作ることができます。

高級イメージであれば「朱子織り」、ポップでカラフルな表現をねらうのであれば「ベタ織り」が向いているでしょう。